小児歯科矯正について
① 小児矯正はなぜ必要なの?
小児では成人よりも顎の成長や変化が著しい時期です。そのため、小児矯正では顎の成長を促すことで、上下顎のバランスを整えることができます。例えば、上あごの成長が下あごよりも発達が弱い患者さんでは、上あごの成長を促すためにフェイシャルマスク(上顎前方牽引装置)を使ってもらう必要があります。
特に下の前歯が上の前歯より前に出ている受け口の症状の要因は、遺伝的な要素も大きく影響しています。小児矯正では上あごの成長がなくなる前に矯正治療を終了しておく必要があるため、受け口の患者さんはできるだけ早く6歳くらいには矯正相談をしておく必要があります。
成人のうち“正常咬合”をもつ方は全体の1%程度しかおりません。逆に言えば成人のほとんどが何らかの矯正治療が必要といえます。
小児矯正を行うことで、必ずしも成人矯正が必要なくなるわけではありません。しかしながら、小児矯正によって成人矯正の難易度を緩和したり、手術を伴う矯正を避けられる可能性があります。
② 小児で矯正するのはなぜ?
ほとんどの場合、顎の成長のバランスを整えたり、重度の叢生(ガタガタ)を緩和するために小児矯正を行いますが、最終的には成長が落ち着いてからでも矯正治療は可能です。その際は、歯を抜いたり手術を必要とする場合が多いです。
③ 小児矯正は何歳くらいが適齢期?
基本的に6歳くらいには矯正相談を受けることをお勧めします。
④ 小児矯正の矯正器具にはどのようなものがありますか?
上あごの成長を前方に促す上顎前方牽引装置や、下あごの成長を期待する筋機能矯正装置、顎を広げる拡大床装置や側方拡大装置があります。
⑤ 矯正は痛いと聞きますが、本当ですか?
基本的に矯正装置を開始して1週間程度気になる痛みが出る場合がありますが、定期的な調整の時は3日くらいに短くなる場合がほとんどです。
お子様の歯科矯正治療の症例
歯科矯正治療は患者さんの噛み合わせや成長の程度によって開始時期や治療方法がそれぞれ異なります。
そのため、歯科矯正相談により治療開始時期を見極めることが大切です。
矯正治療の方法として最も一般的なものは、マルチブラケット装置で歯の表面にブラケットと呼ばれる装置とワイヤーを固定し、ワイヤーが元の形に戻ろうとする力を利用して、3次元的に歯並びを整えるワイヤー矯正と呼ばれる方法です。
ワイヤーも表面を白く塗った目立ちにくいものがあります。
下記に症例の一部を掲載いたします。
※症例の治療費は治療当時の費用になります。
上顎前突(混合歯列期)
主訴 | 上の前歯が出ているのが気になる。 |
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治療期間 | 1年2か月 |
治療費 | 40万円 (税別) |
治療内容 | ヘッドギア装置を夜間に使用し、マルチブラケット装置にて治療しました。 |
治療のリスク | 上の前歯の後戻りや12歳臼歯の異所萌出の可能性があります。 |
反対咬合(混合歯列期)
主訴 | 受け口が気になる。 |
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治療期間 | 1年5か月 |
治療費 | 40万円 (税別) |
治療内容 | 夜間に使用する装置を装着し、マルチブラケット装置にて治療しました。 |
治療のリスク | 上顎の成長を促すために毎日10時間以上の装置の装着が必要でした。 |
過蓋咬合(混合歯列期)
主訴 | 下の前歯が上あごに当たって痛いのが気になる。 |
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治療期間 | 1年2か月 |
治療費 | 40万円 (税別) |
治療内容 | マルチブラケット装置にて前歯を並べてマウスピースにて治療しました。 |
治療のリスク | マウスピースの使用の徹底が必要です。 |
開咬(混合歯列期)
主訴 | 前歯の咬み合わせが気になる。 |
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治療期間 | 11か月 |
治療費 | 38万円 (税別) |
治療内容 | マルチブラケット装置と上の奥歯を奥に下げる装置にて治療しました。 |
治療のリスク | 治療後も舌の癖があれば後戻りしやすいです。 |
叢生
主訴 | 上下の前歯の歯並びが気になる。 |
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治療期間 | 11ヶ月 |
治療費 | 39万円(税別) |
治療内容 | 拡大床で上下の歯並びを広げ、マルチブラケット装置にて治療しました。 |
治療のリスク | 上下の前歯にガタガタがあるので、リテーナーの使用の徹底が必要です。 |